日本語の発音 無声化

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こんばんは。日本語シリーズ第3段です。

前回は鼻濁音について書きました。プロっぽい喋りに必須のアイテムですね。

今回扱う「無声化」は、標準語や関東あたりの方言ではみんな無意識にできているようです。一方、関東よりも西側の方言ではあまり使われないのだとか。ですが、アナウンサーの喋りとかで標準語を聞きなれていると「標準語で喋って」と言われると無声音を無意識に使えるかもしれません。

トークロイド(VOCALOIDに歌ではない会話を行わせること)やHANASU(UTAUというソフトで歌ではない会話を行わせること)の活動をしている人は知ってた方が良い知識だと思います。

もちろん、声優やそれに類する活動を行っている、あるいは行いたいと思っている人は、発音アクセント辞典の記号の読み方を含めてしっかり理解しておくべき内容ではあります。厳密に考えようとすると難しいですが。

さて、突然ですが、「白菜(ハクサイ)」のアクセントを見てみましょう。(毎度おなじみ、NHK日本語発音アクセント辞典です。)

IMAG1191

文字の上にある横棒はもちろんアクセント記号です。中二高と平板の2通りがあるんですね。

見てお分かりの通り、2文字目「ク」が点線の丸に囲まれています。これが「無声化」のサインです。

では、「無声化」とはなんぞや?という話をします。長くなるかも。音声学の話です。

難しい話になっちゃったので、面倒な人は途中ざっくり飛ばしても大丈夫です。

声帯の振動を伴わない「無声音」

音声学の話になりますが、声には声帯の振動を伴う「有声音」と声帯の振動を伴わない「無声音」があります。基本的に全ての発音は有声音か無声音のどちらかになります。

有声・無声という分類は基本的に子音の分類です。「カ・サ・タ・ハ・パ行」は無声子音、「ナ・マ・ヤ・ラ・ワ・ガ・ザ・ダ・バ行」は有声子音です。(それぞれの拗音(小さいャュョが付いた音)は元の音と同じ側に属します)

ですが今回のテーマは「無声母音」です。(と書いていますが、実は母音の欠落である場合もあります。詳しくは後述。)

なぜ有声・無声の分類が子音のものかと言うと、母音は普通、有声音だからです。

「あーいーうーえーおー」と普通に発生すると、全て有声音です。喉に手を当てるとしっかり振動していますね。

無声音の母音とはどういうものでしょうか。

簡単に言うと、寝起きドッキリでの「オハヨーゴザイマス(小声)」が無声母音です。伝われ。

ひそひそ声ですね。耳打ちするときの喋り方です。隣で寝ている人を起こさないように話すときとか。

ただしこれから話すのは無声母音よりもむしろ母音の欠落がメインです。Wikipediaの「無声音」の記事では「母音の無声化」と書いてありますが、母音の欠落と解釈するほうが妥当だと思います。実質ほとんど同じことですが。

「白菜」では母音「ウ」を発音しない

具体的な話をしましょう。「白菜」について、「ハークーサーイー」と言えば、全ての母音を有声母音で発音するのですが、「ハクサイ」と言うと、「ク」の部分で有声母音を発音しないのです。

実際の発音は、「haksai」というような発音になります。「ウ」の母音を言わないのです。これが「無声化」現象です。

Google翻訳で「白菜」と書いて音声再生ボタンを押すとちゃんと無声音の発音が聞けます。Google翻訳「白菜」

無声化現象について、Wikipediaにはこう書いてあります。

日本語の共通語東日本の大部分の方言では、無声子音にはさまれた、または無声子音に続く狭母音(u, i など)が無声音になる傾向があり、母音の無声化という(さ、た、で、など)。

Wikipedia - 無声音

狭母音とは口の中の空間の容積が小さくなる(つまりあまり大きく口を開けない)母音のことで、「イ」と「ウ」がこれに当たります。

「ハクサイ」の発音をローマ字表記で書くと「h a k u s a i」となりますが、この「u」は、「前後どちらも有声音(有声子音または母音)でない」かつ「狭母音である」かつ「アクセント核ではない」という条件を満たしているため、母音が消失して「h a k s a i」という発音になっているのです。(これらの条件を満たしていれば必ず母音欠落が起こるというわけではなく、また、どれかを満たしていなくても母音欠落が起こることはあるかもしれません。)

「アクセント核」という用語が初めて出てきましたが、「アクセントが終了する音」という意味です。アクセント記号で言えば、下向きに曲がってる部分です。(アクセント核については別途記事を書きます。今は別に考えなくても大丈夫です。)

ということは、無声化が起こるのは無声子音と狭母音のペアだけなので「キ・ク・シ・ス・チ・ツ・ヒ・フ・ピ・プ」だけですね。(厳密には、標準語で「カ・コ」も無声化することはありますが(「価格」の1文字目など)、無声化しない方が正しい発音とされているようです。このあたりは非常に難しい話です。)

上の条件には書いていませんが、読点(、のこと)の前の音(無声子音と狭母音のペア)は無声化する場合としない場合があります。句点(。のこと)の前の音(すなわち文の最後の音)は無声子音と狭母音のペアならほとんど全て無声化します。ややこしいですね。

さて、実は「無声化」現象には2通りあります。一つは上記のように「無声子音のあとの母音を発音しなくなる」タイプで、もう一つは「無声子音のあとの母音が無声母音になる」タイプです。

「シ・ス」は摩擦音なので子音単体でそれなりの時間持続的に発音でき、「無声子音のみになるタイプ」の無声化が起こります。「キ・ク」も有気音になることで子音のみになる無声化が多いと思います。

一方、「チ・ツ・ピ・プ」は子音だけ発音すると非常に短くなるので無声母音が続くパターンが多くなると思います。「ヒ・フ」は無声母音があるのかどうかの判別が難しいです。

難しい話ですが、とりあえず、

「無声子音+有声母音」→「無声子音」

と、

「無声子音+有声母音」→「無声子音+無声母音」

という、2種類のタイプの「無声化」があるということを押さえておきましょう。

「無声化」は良いことだけじゃない?

さて、ここからは半分持論みたいなもんになります。

私は言語学なんて関係の無い理系大学生なのですが(音声認識に興味があるので、言語学に完全に無関係というわけではありませんが)、人前に出てプレゼンテーションをするという機会がたまにあります。

私は趣味柄、他人のスピーチを聞くときには喋り方について考えながら聞いているのですが、非常に良くない喋り方をする人がよくいます。というか喋り方についてのレクチャーなんて受けたことないんだから当たり前です。(私は高校生のときに研究発表会でのプレゼンに向けて先生に指導してもらったことがあります)

それは何かというと、「~です。」「~ます。」の「す」の無声化です。

ですますの「す」は無声化する発音です。それはいいんです。が、その「s」の音をめちゃくちゃ伸ばす人がいるのです。「~でssssss。」みたいな。案外自分では気づかないものです。人に言われるか録音・撮影でもしない限り。

sというのは摩擦音であり、高周波成分を多く含む音なので、マイクを通ってスピーカーから流れる音でsを伸ばされると耳が痛くなります。

そもそも、有声音は声帯振動を伴うために低周波成分が多くなるのに対し、無声音は息を摩擦させて発音するので高周波成分が多くなるので、無声化という現象は耳障りになりやすいものなのです。(無声化すると、無声子音の発音時間が長くなる傾向があります。)

文の途中で無声化すべきところで無声化しないと、日本語として不自然に聞こえてしまうのも事実ですが、語尾の「す」に関しては、無声化する場合は、極力短く切るべきです。

また、語尾の「す」に関しては、「無声化しない」という選択肢もあります。若干リスキーではありますが。アニメ声の女の子とかなら可能。

語尾の「す」を無声化しないのは、普通は不自然です。「ゆっくり動画」が分かる人はそれを想像してもらえれば分かると思います。

ですが、例えば「~ですー。」と伸ばすような言い方は、軽いノリの司会者でたまに聞きます。私は不快に感じません。ごく自然に聞けます。

また、アニメなどでは無声化しない発音を割とよく聞きます。具体例があれば載せるのですが、急には思いつきませんねえ。ニコニコ動画の無料配信動画などで見つけたらここか新規投稿に載せます。

1/8追記:

本日配信された京アニ新作「無彩限のファントム・ワールド」第一話(期間限定無料)の10:52あたり、晴彦に名前を聞かれた和泉玲奈の「い、和泉玲奈です……」や「ごめんなさい帰りますっ!」の語尾の「す」が無声化していない発音でした。

12:32あたりの「やっぱり私には無理です」の「す」は無声化しています。

12:56あたり、「いくらでも食べられますぅ」の「す」は無声化していません。母音「う」も伸ばしめです。

13:00あたり、「学食って一度来てみたかったんです」の「す」は無声化。

ちょっとテンションが低かったり、落ち着いて話をしている場面では無声化していますが、戸惑っている、怒っている、喜んでいるときは無声化していませんね。落ち着いていないときは無声化しない傾向があるようです(もともと和泉玲奈役の早見沙織さんの演技は無声化しない「です・ます」が多い傾向がありますが)。

一方、文頭の無声化については、無声化しなくてもあまり不自然にならない場合が割とあると思います。「喫茶店で働く……」という文のはじめの「き」は本来無声化する音ですが、有声母音を短く発音しても全く問題無いように思えます。「地下街に潜む……」「勤め先の……」「光が指す……」の「ち」「つ」「ひ」もそうです。(ただし、日本語としては本来無声化するべき発音なので、母音をしっかり発音すると不自然になります。)

ということで、聞き取りやすい、聞いていて心地のいい喋りを目指すなら、「語頭は不自然でなければちょっとだけ母音を発声してみる」「語尾の『す』は、原則は無声化するが s は短く切る(テンション高めの演技や朗読、ナレーションでは無声化しないのも選択肢の一つ)」ということを心がけると良いんじゃないかな、と思います。

ただし、これはあくまで「特殊なテクニック」なので、原則は無声化は正しく行われるべきだということをしっかり覚えておいてください。特に、文中での無声化は必ず適切に行われるべきです。無声化することでスムーズな喋りになりますし、引っ掛かり無く聞くことができるようになると思います。

あくまで文頭と文末の無声音が耳障りになりそうなときに考えてみる、という程度が良いと思います。色んな人の喋りを注意して聞いてみて下さい。

さて、長くなってしまいましたが、今回はここまでとします。日本語発音シリーズでは次回あたりに「アクセント核」について書く予定です。他にもネタがあったような気がしますが忘れました。滑舌とかかな。(1/8追記:平板化現象について書く予定がありました)

それではまた。

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